乗務は“777一筋”。機体を熟知するパイロットが語る歴史ある主力機の魅力
2025.10.14JAL機長にインタビューし、操縦する愛機の魅力とそれに向き合う姿勢を聞くコラム連載。飛行機の特性や操縦の魅力を通して、空を飛ぶ仕事の奥深さをお届けします。
塚田 智仁
1994年、自社養成パイロットとして入社。1999年に副操縦士としてボーイング777型機に乗務して以来、現在まで乗務経験は777型機のみという、JALでも珍しい経歴のパイロットのひとり。
まるで“同期”のように。777型機と共に歩むパイロット人生
現在も活躍を続けるボーイング777型機が、初めてJALに導入されたのは1996年のこと。それから3年後の1999年に、副操縦士として乗務デビューを果たした塚田智仁は、JALパイロットの中でも、特に777型機と縁が深い人物のひとりです。
今回、話を聞いた機長の塚田。
「国内線用の機材として、777-200が初めて導入された当時、私は自社養成制度でパイロットになるための訓練を受けていました。777といえば最新鋭機でしたから、やはり憧れがありましたし、導入時期が自分の訓練期間と重なっていたので、どこか“同期”のような親近感をおぼえていたんです。それだけに訓練の終盤に、副操縦士として初めて乗務する機種が777-200だとわかったときは、とても嬉しかったですね」
奇しくも、2010年に機長昇格した際の初乗務も777-200だった塚田。以来、300や200ER、そして現在乗務する300ERに至るまで、乗務は777型機一筋とのこと。乗務経験がひとつの機種だけというのは、JALパイロットの中でも珍しい存在です。もちろん塚田にとっての“愛機”もまた777型機であることは、いうまでもありません。
大きなエンジンと長い胴体が特徴のボーイング777型機。
「特に思い出に残っている機体は、JALに導入された5機目の777-200だった『JA8985』(1997~2020年)です。当時、国内線向けの777-200と300は『スタージェット』と呼ばれており、各機体に星座にちなんだ愛称が割り当てられていたことを、おぼえていらっしゃる方もいるでしょう。JA8985の愛称は『プロキオン(こいぬ座)』でした」
今は退役した「プロキオン」を思い出に残る機体に挙げた理由は、この機体と苦労を共にした訓練生時代の経験があるからとのこと。
「訓練期間中で特に大変だったのは、実機を使ったタッチアンドゴー(着陸後にすぐに離陸する動作)の訓練でした。その時に乗った機体が『プロキオン』なんです。訓練空港でもあった下地島で、3週間で100回以上はタッチアンドゴーを繰り返しました。今ならシミュレーターのみでライセンスが取得できますが、当時はシミュレーターと実機それぞれ訓練と審査がありましたからね。あれから777シリーズ内でいくつもの機体に乗りましたが、苦労を共にした『プロキオン』の姿は、今でもはっきりと脳裏に浮かびます」
ボーイング社の設計思想を反映したフライ・バイ・ワイヤがもたらす777型機の“人間味”
初乗務から30年近くにわたり、777型機に乗り続けている塚田。その操縦に熟知したパイロットとして、特に感じているこの機種の魅力は“人間味のある操舵感”だといいます。






