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日本紀行 福井県

【越前】カニの季節到来!美味しさの秘密は、鮮度にあり。〜日本酒、汐うに、冬の味覚を求めて日本海へ〜

2024.01.15

令和6年能登半島地震により、被害を受けられた方々ならびにそのご家族の皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。
被災された地域の一日も早い復旧復興を心よりお祈り申し上げます。

冬の味覚といえば、「カニ!」という方も多いのではないだろうか。とりわけ福井県の「越前がに」は、食通を唸らせる誉れ高いブランドだ。旬の味わいを求めて、今こそ福井の美食旅へ出かけてみよう。

越前がにの水揚げ量が福井県で最も多い越前漁港。福井県嶺北地方の西端に位置し、江戸中期には手繰網漁(てぐりあみりょう)などで、ズワイガニ漁が行われていたという。

美味しさは鮮度にあり! 黄色いタグが越前がにの証明書

ズワイガニ漁の歴史が日本で最も古いといわれる「越前がに」は、福井県の4漁港(三国、越前、敦賀、小浜)などに水揚げされるズワイガニの雄の呼称で、雌はセイコガニと呼ばれる。また全国で唯一の皇室献上がにでもあり、最初の献上は1909年と伝えられている。現在も毎年、2月に献上されている高級品種なのだ。

ズワイガニは水揚げされる場所によって呼び方が変わる。山陰地方では「松葉がに」、石川県では「加能ガニ」、京都府の丹後半島では「間人(たいざ)ガニ」。知っていると、ちょっと通を気取れそうだ。

夜明け前の静かな越前漁港。次々と漁船が帰港し、9時から越前がにの競りが始まる。

生きたまま漁船で運ばれた越前がには、黄色いタグを取り付け海水の水槽へ。また元気に動き始める。

漁の期間は、毎年11月6日から翌年の3月20日。雌においては11月6日から12月31日までと厳しく定められている。だが今シーズンは、荒天のため2日遅れのスタートとなった。

「風が強うて2日も漁に出られんなんて、44年の漁師生活で2度目。でも、漁の初日は大漁やったからよかった」
ホッとした様子で話してくれたのは、山下義弘船長。越前町漁業協同組合所属の底曳網漁船「幹昌丸」(9.9t)で、ふたりの息子とインドネシア人研修生とともにカニ漁を行っている。
「大変なことも多いけど、楽しいから続けられるんかな」
荒天により出漁が見送られたのは実に43年ぶりのことなのだそうだ。

山下船長(中)と長男の弘嗣さん(左)、次男の大輝さん(右)。カニの好きな食べ方は「茹で一本、とにかく茹で」と即答。「カニの身と岩のりと、各家で作るなっと味噌を混ぜて、ごはんにのせて食べるのが最高」(大輝さん)。

越前がにの最高級品は、近年、高額な落札価格で話題に上る「極(きわみ)」だ。福井県が2015年に設けたブランドで、サイズや重さだけでなく、競り人や仲買人の同意を得られなければ認められないという厳しい基準がある。昨シーズンは、越前漁港で2.2kgの「極」が史上最高価格の310万円で落札され、大きな話題となった。

「ものすごい金額やからね、そら取れたら嬉しいけど、昨シーズンは45匹、水揚げ全体の0.02%にしかならん量や。今年はどうなるんかね。まあ頑張るよ(笑)」(山下船長)

水揚げされた大漁の越前がに。大きさやキズの有無などの状態を確認して、越前がにであることを証明する黄色いタグを付けていく。タグ付けは全国に先駆けて越前町で1997年より始められ、ブランド化が行われた。

越前がにの美味しさの最大の理由は、その鮮度にある。カニの漁場である越前沖は暖流と寒流がぶつかる海域で、餌となる植物プランクトンや小魚が豊富だからカニもすくすくと育つ。冬の海水の冷たさも身を美味しくしてくれる要素だそうだ。越前海岸沖は急深でカニの生息水域(水深250〜400m)まで一気に深くなる。

「漁場まではだいたい1時間から2時間ほど。だから、取れたカニをすぐに港に運んで、活きたまま競りにかけることができるんよ。それが、越前がにが美味しい最大の理由やと思う。うちみたいな小型の船が多いのも福井のカニ漁の特徴だね」と大輝さん。

  • 初競りには、競り人と仲買人だけでなく、たくさんの報道関係者も駆けつけて大賑わいに。

  • 水揚げされタグ付けされたカニは、漁船ごとに手早く並べられていく。

  • ズワイガニは国が漁業可能量を毎シーズン設定して各県に配分する。

  • 黄色のタグ付けはカニのブランド化のため、全国に先駆けて越前町で1997年より始められた。

福井のカニ漁は袋状の網を海底まで落として引き、カニを網に追い込んで取る「底曳網漁」が主流。沖泊まりせずに日帰りで漁を行うため、越前漁港に停泊する漁船は10t前後の小型の底曳網船が多い。現在、越前町漁業共同組合には、小型・大型あわせて県内最多の約40隻の底曳網漁船が所属している。

また福井県では、大切な資源であるズワイガニを守るための規程を設けている。厳しい漁期制限、産地証明タグの取り付け、禁漁期間の「越前網」(ズワイガニを逃すことができる改良網)使用の徹底、甲幅90mm未満の雄カニの採捕禁止などは、次の世代につなぐための取り組みなのだ。

カニの大きさを見極め、茹では長年の経験で

越前海岸の美しい夕焼けに照らされる、かねとも水産。カニの茹で上げ作業は日没後まで続けられた。

越前漁港の近くには、いくつもの直売所が点在している。越前海岸線を走る国道305号線沿いにある「かねとも水産」は、越前漁港で水揚げされる鮮魚や越前がにを県内外の市場や料亭、旅館などに卸す仲買業のほか、一般客への販売も行っているので、取れたて、茹でたての越前がにが購入できると観光客にも人気だ。越前漁港で競り落とされた越前がにが、熟練の職人たちによって手際よく茹で上げられていく。

  • 越前漁港で競り落とされた越前がにを茹でる大きな釜。

  • 茹で時間は長年の経験で調整。簡単かつ豪快に行われているように見えるが繊細な作業だ。

  • 塩分濃度や温度、茹で時間は、かにの大きさや様子を見ながら素早く判断。塩分濃度は雄の越前がにの方を雌のセイコガニよりも少しだけ薄めにするそうだ。

  • 茹で上がったカニを確認。茹でが足りないと、身の味わいへの影響はないものの、腹の部分の色がほのかに青みを帯るのだとか。

初競りの日は、越前漁港と店を行き来して大忙しだった、かねとも水産の中橋正人社長。店では大量のカニが茹で上げられて、出荷を待っている。

かねとも水産

やっぱり茹で、見た目も豪華な究極の献上がに

三国港であがった1.4kg超えの堂々とした「献上がに(皇室献上級の上質な越前がに)」。茹でる前に、まずこの状態で見せてくれる。

県外からも食通たちが訪れるという「御料理 一燈」は、2021年のミシュランガイド北陸版で二つ星を獲得した日本料理店。店主の倉橋紀宏さんによって供されるのは、故郷の福井を中心に石川、富山の北陸の味(越味/えつみ)の魅力をより強く感じさせてくれる美しい料理。冬は、ほとんどの人が越前がにを存分に堪能できるコースをオーダーするそうだ。

まずは、茹でる前に見事なカニの姿をお客さまに披露してから調理に取り掛かる。黒いつぶつぶはカニビルの卵で、これが多くついているカニは脱皮後の時間が長く、身の詰まりもよいとされている。

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