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Special イギリス

【ロンドン】個性派書店が勢揃い! 〜料理本の調理から運河に浮かぶボートまで。新しい読書のスタイルとは〜

2024.01.29

ロンドンの書店が面白い。注目すべきは観光客も訪れるユニークな試みと、文化に重きをおく唯一無二の伝統だ。一冊の本からつながる思いがけない出合いは、書店の魅力を改めて感じさせてくれる。

メインフロアを2階のコの字型バルコニーから眺めて。

イギリスで最も美しいと評される書店って?

ハイブランドの店が連なる高級ショッピング街の最寄り駅、ボンド・ストリート駅から北へ歩くと、落ち着いた街並みのマリルボーン・ハイストリートに入る。10分ほどで見えてくるのが"イギリスで最も美しい書店"と評される「ドーント・ブックス」だ。

カフェやレストラン、ブティックが立ち並ぶマリルボーン・ハイストリートにある「ドーント・ブックス」。

赤煉瓦と石のコントラストが美しい、エドワード朝様式の建物。

店内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは奥に配置された大きな飾り窓。天窓の光を柔らかに受け、本棚には上から下まで本がぎっしりと並ぶ。

「『元々は教会だったのですか?』とよく聞かれますが、約110年前に骨董書専門店として建てられた建造物です」と店員のジャック・ポロさん。高い天井の空間は確かに大聖堂のよう。

大の旅行好きで知られるオーナー、ジェームズ・ドーントさんの特徴的な陳列方法も魅力の一つ。国ごとに棚を分け、ガイドブックや歴史関連だけでなく地域を題材にした小説、さらには作家を出身地ごとに分類するなど、興味がある国や地域を深掘りできるようになっているのだ。

ドーント・ブックス勤務10年のジャックさん。スタイリッシュなデザインが施された日本の作家の英訳作品は、眺めるだけでも楽しい。

ロンドンの5つの支店では、各地域の読者層を鑑みて品揃えを調整している。ジャックさんは続ける。「本のデザインがここ十数年で、ぐっと洗練されたように感じます」。昔の文芸作品も、新しい装丁によって思わず手に取りたくなり、購入予定外の本を何冊も抱えてレジに向かう人が多いという。電子書籍と違い、本を開くたびに目にする表紙や装丁は、読書体験の一部なのだ。

本を平置きで陳列する時、新しく入った従業員には「きれいに並べすぎないように」と指導するそうだ。「本は手に取ってこそ価値がある。完璧に整えると、お客さまが触れるのをためらいますからね」という。

本を置いて眺めたり選んだりするのにちょうどよい、カウンター付きの棚。

従業員同士が互いの得意ジャンルやどんな本を読んでいるかを熟知しているので、好みが似通ったお客さまへの本選びもチームワークが功を奏す。コロナ禍以降、社会と自分の関係性を見直し、意義のある仕事として書店員を選ぶ若者もいるという。ジャックさんが「ハイブ・マインド(集合精神)」と表現する空間は、人を集める求心力があるようだ。

イギリスでは2016年、867店まで減少していたインディペンデント(独立系)書店が2022年末には過去10年で最多の1,072店を記録。コロナ禍で読書に癒やしを求める人が増えたこと、また生き方を考える機会が増えた時期であり、SNSなどを通して地域文化を発信する書店の価値が再認識されたことも背景にあるのかもしれない。

センスのよいカードや文具類も販売。観光客のお土産としても人気のオリジナルのキャンバスバッグ。メタリックプリントが施された特別仕様(18ポンド)。

Daunt Books

  • 83-84 Marylebone High St., London W1U 4QW
  • 営業時間 9:00〜19:30(月〜土曜)、11:00〜18:00(日曜)
  • https://dauntbooks.co.uk/

宝探し気分を楽しんで、運河に浮かぶ書店

船上の演奏に集まった人々が本を手に取ることも。

さざめく水面と、ほのかな揺れ。ボートを改造した小さな書店「ワード・オン・ザ・ウォーター」は、ユーロスターが発着するヨーロッパへの鉄道玄関口、セント・パンクラス駅に近いリージェンツ運河に浮かぶ。親の手を離し駆け寄っていくのは、好奇心旺盛な子どもたちだ。

再開発が進み、整備されたリージェンツ運河をグラナリースクエア橋から眺めて。

「12年前、既に斜陽と思われていた本を売る仕事を始めるなんて、我ながら普通じゃないと思いました」とオーナーのパディ・スクリーチさん。運河は同じ場所に停泊できる期間がエリアごとに決められているため、2週間ごとに舫(もや)いを解いては移動する生活を7年ほど続けていた。それが逆に話題となり、どこに停泊しているかわからない「水上の移動書店」をSNSで追うフォロワーが増え、徐々に注目されるようになったという。

思いもよらなかった現象に、「若い世代の古いものへの郷愁と回帰は、将来への不安からなのかも知れない」と分析するパディさん。以前はチャリティのホームレス援助団体に勤めていたそうだ。音楽が流れる空間で、本を開く平和な時間を楽しんでもらいたいと語ってくれた。

落ち着いて本選びができるボート内部。

窓から水面が見えるのは、運河ならではの光景だ。 薪ストーブがある奥は児童書のコーナー。親子が楽しそうに絵本を広げていた。

船内の本棚は、思いもよらぬ本が見つかるように、あえてジャンルは設けていない。膨大な情報量のオンラインの世界と違い、程よい狭さの空間が探索気分を掻き立ててくれる。初デートで来るカップルも多いそうだ。

週末や天気のよい季節には、屋根の上がステージになりライブが行われる。人々が自然と集まり、座って音楽に聞き入ったり、本を眺めながら足で拍子をとったりと楽しんでいる。

春から秋にかけてミニライブが行われる。冬でも天気のよい日は演奏があることも。

元々、本が大好きだったというパディさん。創業時は資金がなく古書を集めてボートで移動しながら売っていたが、2017年に再開発された現在の人気スポットで、期限のない停泊許可を得たことから新刊書の販売も開始。客層も広がり、ロンドンでも指折りの人気書店の仲間入りを果たした。周りには次第にミニシアターやタロット占いの船が集まり、活気づく水辺。本と人、水と音楽から、コミュニティが形成されている。

運河沿いを散歩する人も多く、天気のよい日はとても賑やか。

Word on the Water

  • Regent's Canal Towpath, London N1C 4LW
  • 営業時間 12:00〜19:00

今日のランチはどのレシピ? 美味しそうな匂いがする料理本専門店

ディスプレイ台がテーブルに早変わり。ランチタイムも書店として営業している。

料理本専門店であると同時に、店内でランチも提供するという「ブックス・フォー・クックス」。12時から一回転のみ、予約は取らず席が埋まったら終了のため、開店時刻が近づくと行列ができる。メニューはオーナーのエリック・トゥルイユさんの気分と仕入れた食材で当日の朝に決まるが、唯一のルールは、店内の料理本からその日のレシピを選ぶこと。多い日は30人が食事を楽しむ。

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