日本はジェット気流の通り道!? 冬の風と運航時間の関係
2025.02.13「コックピット日記」は会員誌『AGORA』から続く、JAL機長によるエッセイです。
5人の機長が毎回交替で、パイロットや飛行機に関する話などをお届けします。
今月の担当は、ボーイング777型機機長の隅田 聡です。

ボーイング777型機。天候がよい日には、羽田空港から富士山が見える。
今回は、冬のフライトで私たちパイロットが注意を払う自然現象の一つ、“ジェット気流”についてお話します。
ジェット気流とは、上空約30,000~40,000フィート(約9,100〜12,000m)を流れる長さ数千km、幅数百km、厚さ数 kmにわたる強い西風の帯のこと。地球の周りを西から東に向かって吹く偏西風の一種です。
日本の上空はこのジェット気流の通り道にあたり、冬になると特に強い西風が吹きます。その最大風速は200ノット(秒速105m)にも達し、飛行経路や飛行時間とも密接に関わっています。
例えば、先日私が乗務した羽田空港から福岡空港のフライトをお伝えします。
この日は、上空40,000フィートで約150ノットのジェット気流が吹いていました。羽田空港から福岡空港へ西に向かう往路のフライトでは、向かい風を受けながら平均時速560km程度で飛行し、約1時間50分の飛行時間を要しました。
一方、ジェット気流に乗って飛行する復路のフライトでは、平均時速は1,000kmに達し、飛行時間は1時間10分ほど。ジェット気流の影響によって、往路と復路にこれほど大きなフライトタイムの差が生まれるのです。