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チームワークでより安全に! 雪のフライトを支える「防除雪氷液」とは?

2024.12.13

「コックピット日記」は会員誌『AGORA』から続く、JAL機長によるエッセイです。
5人の機長が毎回交替で、パイロットや飛行機に関する話などをお届けします。
今月の担当は、ボーイング767型機機長の鈴木 学です。

雪景色とボーイング767型機。

私が初めて単発機で訓練を行ったのは、真冬の帯広でした。一面の雪に覆われた冬の大地や、大気中の水蒸気が氷結するダイヤモンドダスト……。その時に見た美しい風景は、今も鮮明に記憶に残っています。このように美しい風景をつくり出してくれる雪ですが、実は飛行機にとっては少々注意が必要な存在でもあります。

今回は、そんな「雪」についてのお話をご紹介したいと思います。

冬の時期に北海道や東北へのフライトをご利用されたことのある方は、駐機場で作業員が象の鼻のようなノズルから飛行機の翼や胴体に“ある液体”を振りかけている光景をご覧になったことがあるかもしれません。

この“ある液体”の正体は、「防除雪氷液」です。その名のとおり、機体の雪を取り除き、さらに機体表面への着氷や積雪を防ぐためのものです。

飛行機は翼から揚力が発生することで飛行しています。そのため、翼の上に雪があると翼型(翼の断面の形状)が変わり、揚力の減少、雪による重量の増大や抵抗の増加を引き起こし、離陸距離の延長、上昇性能の不足など離陸に支障が出てしまいます。このようなリスクを避けるため防除雪氷液を使って、出発前に機体の除雪氷や防雪氷を行っているのです。

防除雪氷液は粘性が高く、この液体で機体をコーティングすることにより、雪や氷を溶かし、さらに機体に付着しにくくすることができます。これまでは無色透明の防除雪氷液が多く使用されていましたが、近年では、用途別に着色した防除雪氷液を採用することも増えています。散布範囲がわかりやすくなることで作業効率が上がるほか、コーティング漏れを防止する効果が期待されています。

このように、雪の日の安全なフライトを支えてくれる防除雪氷液ですが、その効果の持続時間は雪の種類(雪、霜、雹、雪あられ、凍雨など)や気温によって変わります。通常であれば1時間程度、非常に厳しいコンディションの場合は15分程度になってしまうこともあります。この時間を過ぎてしまうと、飛行機は駐機場に戻り、改めて防除雪氷液のコーティングを行う必要があります。

「1時間もあれば、十分離陸できるのでは?」

そう考える方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、多くのフライトでは効果が持続する時間内に離陸することができますが、雪の日は通常時よりも離陸に時間がかかる理由がいくつも重なります。

例えば、飛行機のタイヤは雪道では非常に滑りやすく、雪の誘導路では、ゆっくり慎重に走行しています。そのスピードは、時速5〜30kmと通常時の半分ほどです。

また、エンジンへの着氷を防ぐために、エンジンの出力を一時的に上げる「Engine Run Up」と呼ばれる作業などを行うこともあります。さらに、雪が降り続いているような場合には、定期的に滑走路や誘導路を除雪する必要があり、この間は離陸することができません。

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