“視線”の変化がもたらす安全性の向上──ボーイング787型機の頼もしきHUD
2026.01.13「コックピット日記」では毎回、機長がパイロットや飛行機に関する航空豆知識を、実体験を交えてご紹介します。今月の担当は、ボーイング787型機機長の田嶋雅彦です。
ボーイング787型機のコックピット内。
ボーイング社製では787型機から標準装備となった“HUD”
2025年12月現在では50機以上が運航されており、名実ともにJALの主力機といえるボーイング787型機。私は767型機、777型機を経て、2012年からは主に787型機に乗務をしています。787型機は777型機と操縦操作や手順の大部分が共通化されているところが大きな特徴ですが、最新鋭機である787型機は777型機より大幅に進化しているため、注意すべき点も少なくありません。今回は、その中でも特に際立った変更点のひとつである、ボーイング社製では787型機から標準装備となった「HUD(Head-Up Display/ヘッドアップ・ディスプレイ)」についてお話しします。
ちなみに通常は旅客機のパイロットが乗務できる型式は1つに限定されていますが、2019年以降日本では「MFF(Mixed Fleet Flying)」制度により、“姉妹機”であるボーイング777型機と787型機の同時乗務が可能になっています。
パイロットの疲労軽減と集中力維持に貢献する“HUD”
飛行機の操縦は、前方の景色と計器の情報を交互に確認しながら飛行する「コンポジット・フライト」が基本になります。ウィンドウから見える景色と計器類の両方を確認する際には、視線を変えるため頻繁に頭部を動かす必要があり、その動作の連続が疲労の原因のひとつになります。そこで、パイロットの疲労軽減や集中力維持を目的として開発されたのが、ウィンドウと同じ位置に必要な計器の情報を表示させるHUDです。
ボーイング787型機に装備されているHUD。飛行時だけではなく、離着陸や滑走路の移動時にも効果を発揮する
頭部を動かすことなく、前方の景色と計器の情報をほぼ同時に確認できるメリットは、特に長距離フライトで発揮されます。実際に数えたわけではありませんが、長距離路線のパイロットがコンポジット・フライトで頭部を動かす回数は相当なもの。その回数が激減するわけですから、私たちパイロットにとってHUDがどれほど有益な存在であるか、おわかりいただけるのではないでしょうか。




