小さなパーツに大きな役割!? 翼の先端にある「翼端板」とは
2025.04.28「コックピット日記」は会員誌『AGORA』から続く、JAL機長によるエッセイです。
5人の機長が毎回交替で、パイロットや飛行機に関する話などをお届けします。
今月の担当は、ボーイング777型機機長の隅田 聡です。

ボーイング777型機。
フライト中に窓の外をご覧いただくと、飛行機の機種や仕様によって主翼の先端の形が異なることに気付く方も多いのではないでしょうか。例えば私が乗務するボーイング777型機は、鳥の翼のように先端に行くほど細くなり、後方に向けて角度がついています。一方、エアバスA350型機の場合、主翼の先端は上に向かって反り上がるような翼端の形をしています。
今回は「翼端板」と呼ばれる、主翼の先端部分の役割についてお話しします。

赤色で塗装された、エアバスA350型機のウイングレット。
鳥の翼のような形をしたボーイング777型機の翼端板は「レイクドウイングチップ」、上に向かって反り上がったエアバスA350型機の翼端板は「ウイングレット」と呼ばれています。その他、飛行機の機種や仕様によって翼端板の形や呼び名に違いはあるものの、基本的な役割は共通しています。それは、フライト中に発生する「翼端渦」を抑制することです。
翼端渦とは、主翼の先端で発生する渦状の空気の流れのことです。これは、翼の上下に発生する圧力の差によって生まれるもので、飛行機の飛行に欠かせない揚力に対する抵抗となります。そのため、翼端渦を抑制することは、燃費を向上させ、CO2排出量を削減するために重要なポイントとなっています。
例えば、ウイングレットの製造を手掛けるアビエーション・パートナーズ・ボーイング社は、ボーイング767-300ER型機の場合、ウイングレットを搭載することで4〜5%の燃費向上と、それに伴うCO2排出量削減が見込めると発表しています。