1秒が大きな差を生む!? 定時運航を支える、地上でのチームワークとは
2025.06.27「コックピット日記」は会員誌『AGORA』から続く、JAL機長によるエッセイです。
5人の機長が毎回交替で、パイロットや飛行機に関する話などをお届けします。
今月の担当は、エアバスA350型機機長の堀 健太郎です。

エアバスA350型機。
今回は、私たち航空会社の使命の一つ、“定時運航”についてお伝えしたいと思います。
ご搭乗のお客さまの最終目的地は、空港ではありません。そこから、商談に向かわれる方、家族や友人に会いに行かれる方、旅行を楽しまれる方など、皆さまがさまざまなご予定をお持ちでいらっしゃいます。安全を最優先にした上で、定時到着を確保し、それぞれのご予定に清々しく向かっていただきたい――。そんな思いが、私たちの原動力になっています。
実は、定時運航のためには、地上での準備が何よりも大切です。
その理由は、定刻を遅れて出発した飛行機が空の上で遅れを取り戻すことは、そう簡単ではないからです。例えば、私が乗務するエアバスA350型機の巡航速度はマッハ0.85ですが、ジェット気流の中での風の変化を考え、多くの場合、最大速度に近い速さで飛行しています。安全の範囲内で速度を上げたとしても、国内線では到着時間は数十秒程度しか変わりません。
一方、多くの飛行機が出発を待っている空港では、管制官に許可をもらうタイミングが
1秒遅くなるだけで、離陸の順番が繰り下がり、結果として5分以上の遅れにつながることもあります。
つまり、いかにスムーズに出発までの準備ができるかが、定時運航を左右するポイントなのです。特に折り返し運航が多い国内線では、一つの便の遅れがその後のフライトスケジュールにも影響してしまうため、実に多くの部門・スタッフが連携し、定刻での出発を目指してさまざまな取り組みを行っています。