JAL整備士が語る現場のリアル――女性は1割弱。空の安全、自身の安全を守る
2025.06.13空の上で、空港で、日常で――。JALグループの舞台裏を紹介する連載企画。今回は整備士の働き方について取材した。

ボーイング737型機の前にて。
羽田空港では、約1,200名の整備士が空の安全を支えている。その業務は大きく分けて2種類あり、一つは飛行機が到着してから出発するまでの間に行う「ライン整備(運航整備)」。そしてもう一つが、飛行機を格納庫で徹底的に検査・整備する「ドック整備(点検重整備)」。
今回はドック整備担当の整備士にインタビュー。常に緊張と隣合わせの仕事の現場とは。

航空整備士
森辺沙耶花
2004年入社。整備士としてのキャリアを成田空港でスタートし、エンジン専門に整備を行う。2013年に羽田空港に異動後、点検重整備のエンジン担当チームへ。日々、エンジンと向き合っている。

航空整備士
松本華奈
2017年入社。点検重整備にて、航空機のランディングギアやフライトコントロールの整備を担当。
2021年にボーイング737型機の一等航空整備士の資格を取得。
増えている女性の航空整備士。今は全体の1割弱に
――ずばり女性から見て、整備士の仕事環境はいかがですか?
JALエンジニアリング 森辺沙耶花(以下、森辺)以前より働きやすくなりましたね。私が入社した2004年頃は、女性の整備士はほとんどいませんでした。高専出身なので男性が多い環境には慣れていたんですが、やはり体力面でどうしても差が出てしまうため、先輩方もどこまで作業を任せたらいいのか、最初は手探りだったようです。そのため、少し心の距離を感じていた時期もありました。でも今は、ひとりで難しいことはふたりで一緒に作業をするなど、協力しやすい環境になっています。そういった面でも働きやすくなりましたね。
JALエンジニアリング 松本華奈(以下、松本)森辺さんのような先輩が道を切り開いてくださったおかげで、今の私たちがあると思っています。私が入社した頃の女性は1,000人に5人程度でしたが、後輩を見ると女性が増えてきたことを実感します。また、以前は産休・育休後に現場へ復帰する人はほとんどいませんでしたが、最近は復帰する人が増えています。私もそのひとりです。

森辺は大分県出身。JALの整備士は、九州出身が多いという。

松本は2024年の年明けに産休に入り、2025年5月に育休から復帰した。
――具体的な働き方を教えてください。
森辺整備士の勤務はシフト制で、夜勤のない「2交代制」と夜勤のある「3交代制」があります。2交代制は6日、3交代制は5日で1サイクルです。
松本私は復職したばかりなので、今は時短勤務で日勤のみです。「2交代制」、「3交代制」のどちらの経験もあります。
【夜勤なし:2交代制】
日勤→日勤→遅番→遅番→休日→休日(6日サイクル)
【夜勤あり:3交代制】
日勤→遅番→夜勤→夜勤明け→休日(5日サイクル)
――1日の仕事の流れは?
松本出社後はまず、タブレット端末で今日の担当機体、作業工程や内容、スケジュールなどを確認します。つい2年前までは大きな手書きのホワイトボードで、自分の名前の書かれたマグネットを見て確認していました。時代の変化を感じますね。

「毎日業務内容が異なるので、始業前に必ずタブレット端末で確認します」(森辺)。

出社前に自宅でアルコール検査を行い、出社後にも再度行う。
森辺始業前にはアルコール検査も行います。その後、格納庫に移動して全員で必ず「JAL本気の!ラジオ体操」で体をほぐします。これは普通のラジオ体操と動作は同じですが、正しい姿勢で、一つ一つの動作を丁寧に行うというもの。ラジオ体操をすると、自然と仕事へのスイッチが入りますね。やはり体を動かす仕事なので、準備運動によって怪我を防ぐことにもつながっていると思います。