【パリ】 自転車で名所巡りをしてみませんか?〜環境に優しい“サイクリング観光”を体験〜
2024.07.29現在、パリでは“自転車ユーザー”の数が急増中。都市全体を自転車に優しい街にすることを目標に掲げ、今や市民だけでなく観光で訪れる人にとっても、自転車は身近な存在になりつつある。パリの歴史と新たな息吹が感じられる名所を求めて、いざ自転車の旅へ!


気持ちのよい風を感じながら、パリの美しい街並みを、自転車で駆け抜ける。
サイクリング観光に力を入れるパリ
初夏の風が気持ちのいい朝や日曜日の午後、多くの自転車が颯爽と走り抜ける。スーツ姿にリュックを背負って通勤する人、子どもを後ろに乗せて学校へ向かう人、レンタル自転車に乗る観光客……。自転車は、今やパリの風景の一部となっている。
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パリ市は、自動車によるCO2排出量を削減して環境に優しい街を目指し、車道や駐車場の削減を進めている。2015年からは、毎月第一日曜に、中心部など一部の区間で一般車両の走行を禁止する「Paris Respire - sans voiture(ノーカーデー)」も実施。環境、そして健康増進に適した移動手段として、自転車の利用を推奨してきた。
自転車の存在感がぐっと増したのは、まず2019年、公共交通機関の大規模ストライキの時だ。およそ2カ月続いた混乱の中、市民は次々と自転車移動に切り替えた。なんともパリらしい理由だ。さらに決定打となったのは、新型コロナウイルスによるパンデミックだった。地下鉄やバスといった公共交通機関を避けるために、多くの人が自転車に乗り始めたのだ。

セーヌ川沿いの自転車道を走る人達。直線の道なので走りやすい。
パリ市が発表した2022年の調査によると、移動に自転車を選ぶ人の割合はパンデミック時に比べて約2倍、自転車道の走行量は2018年に比べてなんと166倍に増えたそう。
フランスでは自転車は歩道ではなく車道を走るため、事故の危険性が問題になっていたが、自転車専用レーンの設置が進み、快適さもアップ。専用レーンの距離は延べ1,000kmを超え、設置工事は現在も続いている。

ルーブル美術館やパリ市庁舎に続く、リヴォリ通り。2020年から自転車専用道に。車道は市営バスやタクシー限定の1レーンのみ。

バスティーユ広場。以前は車が往来するロータリーだったが、自転車専用道と遊歩道をメインとした広場に生まれ変わった。
自転車で出掛ける、新たな観光のカタチ

「ル・プロトン・カフェ」のオーナー、ポール・バロンさん(左)とカフェスタッフのイヴォンヌ・ウオイタスさん。
自転車での観光を始める前に、ぜひ訪れてみたいのが、自転車をテーマにしたカフェだ。中でも「ル・プロトン・カフェ」は、17世紀の美しい建物やギャラリーが並ぶ歴史的地区として知られるマレ地区にあり、セーヌ川もすぐ近くの好立地。
レンタル自転車の提案とサイクリング・ツアーを主催している会社が運営するカフェで、コーヒー一杯を飲みに気軽に立ち寄れる。
オーナーは、24年前からパリに住むニュージーランド出身のポール・バロンさん。2005年にサイクリング・ツアーを提案する「バイク・アバウト・ツアーズ」を立ち上げ、10年後の2015年にカフェをオープンした。
「パリに来た友人を案内する時、徒歩では時間がかかるし、地下鉄は風景が見えない。そこで、自転車なら便利で速いし、別の視点でパリを満喫してもらえるんじゃないかと考えて。自分でも自転車を買って、ツアーを提案するようになりました」

厳選したコーヒー豆で淹れるコーヒーも評判。開放感のあるスペースに、自転車好き、コーヒー好きが集う。

ロードレースをモチーフにしたロゴ。サイクリングシャツやマグカップなど、ロゴ入りのオリジナルグッズも販売。
当時、パリではまだ自転車は少数派の時代。「この5年で自転車専用道路が一気に増え、走りやすい環境になりました」。今では、自身も子どもの送り迎えに自転車を使い、カフェへも自転車で通勤しているそうだ。
「自転車ユーザーが増えたので、通学・通勤時は車ではなく、自転車の渋滞に悩まされるほどです」と、バロンさんは笑う。
店内のレンタル自転車は、軽いロードバイクと一般向けのシティサイクル、家族向けのファミリーバイクの3種を用意。サイクリング・ツアーは、カフェを出発地とし、「隠れたパリ」「パリの味」などといったユニークな名前のものから、ヴェルサイユ宮殿への1日ツアーなどまで、バラエティに富んだテーマで展開している。ツアーの出発前や終了後には、厳選した豆から淹れるコーヒーでゆったりと休憩を。
ル・プロトン・カフェ Le Peloton Café
- 17 rue du Pont Louis-Philippe, 75004 Paris
- 8:00~17:30(月~金曜)、8:00~18:00(土・日曜)
- https://www.lepelotoncafe.cc/
- レンタル自転車の料金:シティバイク15ユーロ(4時間)、25ユーロ(24時間)他
- https://www.lepelotoncafe.cc/bike-rentals
- ツアー料金:パリ市内ツアー45ユーロ、5歳以下20ユーロ(所要時間3.5時間)、ヴェルサイユ宮殿ツアー 115ユーロ、5~17歳99ユーロ(所要8時間)他
- https://www.bikeabouttours.com/
セーヌ川沿いを走って、ひと休み!~お洒落なカフェでおいしい時間~

フランスの世界遺産「パリのセーヌ河岸」。登録には左手の宮殿「コンシェルジュリー」も含まれている。
パリの観光で欠かせないのが、歴史のある名所巡り。セーヌ川沿いは、そんな目的を気持ちよくかなえてくれる格好のサイクリングスポットだ。パリで最も美しい橋と称されるアレクサンドル3世橋、オルセー美術館、エッフェル塔などを見ながら走るのは、住み慣れたパリ市民にとっても至福のコースだ。
自転車散策の合間には、おいしいお菓子やランチが楽しめるカフェでひと休みを。

「カフェ・ジャック」にて。すぐ近くにエッフェル塔が見える。
休憩だけでなく、目的地にもしたいカフェが、セーヌ川左岸にある「カフェ・ジャック」だ。エッフェル塔の程近く「ケ・ブランリー美術館」の庭園内にあり、静かで開放的な雰囲気が魅力。ミルフィーユ、エクレアといったフランスの伝統菓子がそろい、屋外のテラス席に座れば、エッフェル塔がすぐ目の前に。
パリならではの美しい眺め、穏やかな雰囲気、おいしい食事でエネルギーをチャージして、サイクリング観光を続けよう。

ガラス張りで開放的な店内。

食後のデザートやティータイムには、ミルフィーユやフルーツのタルトなど、フランス伝統のパティスリーを楽しんで。
カフェ・ジャック Café Jacques
- 27 Quai Jacques Chirac, 75007 Paris/206 rue de l'Université, 75007 Paris
- 4~9月 11:00~19:00(火~日曜 ランチ12:00~15ː00)、月曜・一部祝日休み
- ※7月と8月を除き、フランスの学校休暇中は毎日営業
- 10~3月 10:30~18:00(火~金曜)、10:30~18:30(土~日曜)

観光にも大活躍!レンタル自転車サービス「ヴェリブ」について
レンタル自転車サービスヴェリブは、2007年の開始以来、シェア自転車の先駆けとして世界で知られる存在だ。
電動アシスト付きの自転車も選べるようになり、さらに便利になったヴェリブ。郊外を含めて約1,475のステーションがあり、パリには300mおきに設置されている。ステーションの地図は、アプリや公式サイトでチェック。
予約の方法
1. 公式サイト「Vélib métropole」で予約・支払いをする
※事前の予約がおすすめ。初乗り料金は3ユーロ~、各種プランあり。
2. アクセスコード、ピンコードを自分の端末画面上、およびメールで確認する
3. ステーションで自転車を選ぶ
青は電動アシスト付き自転車、緑が普通の自転車。サドルやタイヤに問題がないか、事前に確認を。
自転車の画面上にアクセスコード、ピンコードを入力すると、自転車が利用可能に。
自転車で行ってみたい新たなスポット〜日本人建築家たちの挑戦〜

隈研吾さんが手掛けたサン・ドニ・プレイエル駅。
歴史的な建造物に、20世紀以降の建築やスポットが混在しているのも、パリならではの風景だ。近年は日本人建築家が手掛けた建物も数多くあるので、サイクリング観光のコースに取り入れてみてはいかがだろうか。
例えば、パリの北に隣接するサン・ドニ市にある「サン・ドニ・プレイエル駅」は隈研吾さんの設計。2024年6月に完成したばかりの最新の建築として話題だ。
地下4階、地上5階という巨大な駅は、外壁も天井も壁も、木とガラスで覆われている。中央には吹き抜けがあって、どこにいても光がさんさんと差し込む。温もりを感じさせる駅だ。